統計学における代表的な検定手法には、Z検定・t検定・χ²(カイ二乗)検定・F検定があります。
それぞれに「想定している分布」と「何を判別するためのものか」という目的があります。
この記事では、数式抜きでざっくりと本質をつかむことを目的に、4つの検定の違いと使い分けを紹介します。
🔵 Z検定:標準正規分布を想定して「平均のズレ」を検証
✅ 想定分布
正規分布(母分散が既知)
✅ 趣旨
理論上の平均と観測された平均が、正規分布の中心からどれくらいズレているかを検定
✅ 主な使いどころ
- 母平均がある値と異なるか(片側/両側検定)
- 2群の平均に差があるか(母分散が既知の場合)
🔵 t検定:t分布を想定して「小標本の平均のズレ」を検証
✅ 想定分布
t分布(母分散が未知、小標本)
✅ 趣旨
サンプル数が少ないときに、観測された平均が理論上の平均から有意にズレているかを検定
✅ 主な使いどころ
- 母平均の推定(1標本t検定)
- 2つの平均の差の検定(対応の有無で分岐)
- 母分散が不明な場合
🔵 χ²(カイ二乗)検定:カイ二乗分布を想定して「分布のズレ・関係の有無」を検証
✅ 想定分布
カイ二乗分布(非負の偏った分布)
✅ 趣旨
観測されたカテゴリーの分布が、理論的な分布と比べてどれくらいズレているかを検定
✅ 主な使いどころ
- 適合度検定:理論分布(例:等確率)とのズレ
- 独立性検定:クロス集計(例:性別×喫煙)の独立性
- 分散分析の前提確認など
🔵 F検定:F分布を想定して「分散の違い」を検証
✅ 想定分布
F分布(2つのχ²分布の比)
✅ 趣旨
複数のグループ間で“ばらつき(分散)”に有意な違いがあるかを検定
✅ 主な使いどころ
- 2群の分散の比較(例:製品AとBの品質の安定性)
- 分散分析(ANOVA)の前提検定
🧠 まとめ:分布 × 見たいもの
検定名 | 想定分布 | 主な関心 | 主な使い方 |
---|---|---|---|
Z検定 | 正規分布 | 平均のズレ | 母分散既知・大標本 |
t検定 | t分布 | 平均のズレ | 母分散未知・小標本 |
χ²検定 | カイ二乗分布 | 分布のズレ、独立性 | カテゴリデータの分析 |
F検定 | F分布 | 分散の違い | 分散比較・分散分析前提 |
✍ ざっくり一言で言うと…
- Z検定:正規分布で「この平均ズレてる?」を見る
- t検定:少ないデータでも「平均ズレてる?」を見る
- χ²検定:カテゴリごとの「分布ズレてる?」を見る
- F検定:「グループ間でばらつき違いすぎない?」を見る