✅ はじめに
Vertex AIはGoogle Cloudのフルマネージドな機械学習プラットフォームで、モデル開発から運用までの一連のMLライフサイクルを統合的に支援します。その中でも、データセット管理はモデルの品質や再現性を高めるために非常に重要な役割を果たします。
この記事では、以下の観点からVertex AIにおけるデータセット管理のベストプラクティスを解説します。
- データバージョニングとアクセス制御
- データの種類別ストレージ選択
- MLワークフローとの統合(CI/CD対応)
- データガバナンス・コンプライアンスへの対応
📂 1. データバージョニングとアクセス制御
データセットのバージョニング(バージョン管理)は、MLモデルの再現性を高めるために不可欠です。Vertex AIでは、以下の2つの主要なサービスがバージョニングとセキュリティ管理に利用されます。
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Vertex AI Datasets
- データセットの作成・バージョン管理を行い、**IAM(Identity and Access Management)**によるアクセス制御が可能。
- 高度なバージョニングが必要な場合に推奨され、画像、テーブル、テキスト、時系列など多様なデータタイプに対応。
-
Cloud Storage(GCS)
- バージョニング機能を有効化することで、データの世代管理が可能。
- IAMと組み合わせて、チーム間でのセキュアなデータ共有ができる。
- 大規模で多様なデータタイプ(画像、音声、テキストなど)を効率的に扱える。
選択基準
- Vertex AI Datasets:MLプロジェクト内で直接扱うデータセットの管理に最適。
- Cloud Storage:より柔軟なデータ管理や多様なデータ形式を扱う際に推奨。
📂 2. データの種類別ストレージ選択
データの種類に応じて適切なストレージサービスを選択することが、効率的な管理とスケーラビリティ確保の鍵となります。
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BigQuery
- **テーブルデータ(構造化データ)**に最適。
- BigQuery Data Transfer Serviceを使って更新を自動化。
- セキュリティ制御やデータ共有が容易で、大規模データ分析にも強い。
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Cloud Storage
- 非構造化データ(画像、音声、動画、ログファイルなど)に適しており、データバージョニングも可能。
ベストプラクティス:
- BigQueryでテーブルデータを管理し、Cloud Storageで非構造化データを保管するハイブリッド構成が効果的。
📂 3. MLワークフローとの統合(CI/CD対応)
データセット管理をCI/CDパイプラインと統合することで、MLプロセスの自動化が実現できます。
- Vertex AI Pipelines
- CI/CDワークフローと連携して、データセットの作成、更新、バージョニングを自動化。
- モデルのトレーニング、評価、デプロイメントまでを一元管理できる。
注意点:
- PipelinesはMLワークフロー全体の自動化が目的で、データセット管理専用ではありません。ただし、データセット管理も含めたワークフローの自動化には有効。
📂 4. データガバナンス・コンプライアンスへの対応
特に医療・金融などの業界では、データガバナンスやコンプライアンスが重要です。
- IAM(Identity and Access Management)
- データアクセス権限を細かく設定し、組織のガバナンスポリシーを遵守。
- Dataflow + Vertex AI Datasets
- データの前処理とバージョン管理を効率的に行い、データ品質を確保。
- 大規模なデータ処理やETLパイプラインで活用。
📝 まとめ
ニーズ | サービス | 概要 |
---|---|---|
データセットのバージョン管理とアクセス制御 | Vertex AI Datasets + IAM | データセットの作成・バージョン管理・アクセス制御を実現。 |
大規模・多様なデータの保管 | BigQuery(構造化) + GCS(非構造化) | 種類に応じたストレージを選択。 |
ワークフローの自動化 | Vertex AI Pipelines | CI/CDパイプラインと統合。 |
データ品質確保と前処理 | Dataflow + Vertex AI Datasets | 大規模データのETL処理+バージョン管理。 |
🚨 試験対策ポイント(EXAM FOCUS)
- Vertex AI DatasetsとIAMでバージョン管理・アクセス制御を行う。
- BigQueryとCloud Storageの適切な使い分け。
- Vertex AI Pipelinesによるデータセット管理の自動化とCI/CD統合。
- Dataflowを用いた前処理とバージョン管理の連携。
⚠️ 注意事項(CAUTION ALERT)
- Cloud SQLや手動更新はスケーラビリティに欠けるため、選択肢としては避ける。
- Vertex AI Feature Storeは特徴量管理向けで、データセット管理には不向き。