Google CloudのVertex AI Workbenchは、機械学習プロジェクトにおいて強力なツールですが、特に医療・金融・政府データなどの機密性の高いデータを扱う際には、堅牢なセキュリティ対策が求められます。本記事では、GCP認定Professional Machine Learning Engineer試験で出題されたシナリオ問題を元に、Vertex AI Workbenchにおけるセキュリティ対策を以下の6つのカテゴリに整理して紹介します。
1. アクセス制御(認証・認可)
✅ ベストプラクティス
- IAM(Identity and Access Management)ロールの設定
→ 誰がVertex AI Workbenchにアクセスできるか、何ができるかを厳格に制御。 - 監査ログ(Audit Logging)の有効化
→ 誰がいつ、どのリソースにアクセス・変更したかを記録。
❌ よくある誤解
- Cloud ArmorやVPC Flow Logsではアクセス管理や監視はできない。
2. データ暗号化(転送中・保存時)
✅ ベストプラクティス
- TLSによる転送中のデータ暗号化
→ Vertex AI WorkbenchとGCPサービス間の通信を安全に。 - CMEK(Customer Managed Encryption Keys)による保存データの暗号化
→ 鍵を顧客自身が管理することで、より厳密な制御が可能。 - KMS(Key Management Service)の利用
→ 暗号鍵のライフサイクルを安全に管理。
❌ よくある誤解
- Cloud Storageのデフォルト暗号化だけではセキュリティ強化とは言えない(カスタム鍵の活用が重要)。
3. ネットワーク境界の制御
✅ ベストプラクティス
- VPC Service Controlsの導入
→ 他のプロジェクトやネットワークからのデータ漏洩を防ぐ仮想境界を構築。
❌ 注意点
- VPCはアクセス制御や監査の代替にはならない。
- 地域制限(region-based VPC Service Controls)だけでは完全なセキュリティ対策にならない。
4. 監視とインシデント対応
✅ ベストプラクティス
- Security Command Centerの導入
→ 脅威検知、リスク評価、対応までを一貫して支援。
❌ 陥りやすい罠
- 自動化(Cloud Functionsなど)でのセキュリティ監視は便利だが、直接的なセキュリティベストプラクティスではない。
5. データ損失防止・匿名化
✅ 選択的に有効
- DLP API(Data Loss Prevention API)の活用
→ 機密データをVertex AI Workbenchに送信する前にマスキングや削除を行う。
❌ 誤用例
- DLP APIは便利だが、アクセス制御やネットワーク監視の代替にはならない。
6. その他の補足的対策
❌ あまり推奨されない(試験で不正解の選択肢になったもの)
- 2FA(二要素認証)のみを設定すること
→ 認証は強化されるが、暗号化・監査・監視の代替にはならない。 - Cloud ArmorによるDDoS対策
→ ネットワークレベルでは有効だが、Vertex AIのデータセキュリティや監査には無関係。
総括:試験で問われやすい組み合わせ
セキュリティ目的 | ベストプラクティスの例(正解選択肢) |
---|---|
認証・認可 | IAM、Audit Logging、IAP(補足) |
暗号化 | TLS、CMEK、KMS |
ネットワーク境界 | VPC Service Controls |
脅威監視 | Security Command Center |
データ損失防止 | DLP API(補助的に) |
試験対策TIPS
- IAMだけでは不十分。Audit Loggingとセットで使うことが必須。
- “便利”なもの(e.g., DLP, Cloud Armor, VPC Logs)はセキュリティの本質対策としての得点にならないことがある。
- 各対策がどの「目的」(認証、暗号化、監査、監視)に対応しているかを意識して選択する。
このように、Vertex AI Workbenchのセキュリティでは「認証・認可」「暗号化」「監査」「監視」の4本柱が基本です。GCP MLエンジニア試験でもこの構造を意識すれば、高得点が狙えます。