効率的なデータ整理と前処理は、スケーラブルかつ高精度な機械学習(ML)モデルの構築において重要です。Google Cloudは、データの種類やMLワークフローに応じたさまざまなツールとサービスを提供しています。本ガイドでは、効率的なトレーニングのためのデータ整理について、GCP Professional ML Engineer認定に沿った体系的なベストプラクティスを紹介します。
1. 基本原則
- 自動化: 手動エラーを減らし、一貫性を向上。
- スケーラビリティ: 大規模データセットへの対応が必要。
- MLライフサイクル全体の一貫性: データの取り込みからデプロイまで統一的に管理。
- リアルタイムとバッチ処理の両立: ストリーミングとバッチの両ワークフローをサポート。
- 特徴量の一貫性: トレーニングと推論で特徴量を一致させる。
2. ツールとサービス
a. Vertex AI Pipelines
- 用途: 前処理、トレーニング、デプロイメントまでのMLワークフロー自動化。
- 強み: 一貫性、スケーラビリティ、完全自動化。
- 対象データタイプ: 全データタイプ(表形式、画像、音声、時系列)。
b. Dataflow
- 用途: 大規模データのバッチ/ストリーミング処理、データ拡張。
- 強み: 高いスケーラビリティと効率性。
- 対象データタイプ: 全データタイプ、特にリアルタイムストリーミングや大規模データ。
c. Vertex AI Feature Store
- 用途: 表形式特徴量の一貫した管理と提供。
- 強み: 特徴量の一貫性確保、重複排除。
- 対象データタイプ: 表形式(音声、画像、時系列データには不向き)。
d. Cloud Storage
- 用途: 生データ(画像、音声、テキスト)の格納。
- 強み: 大容量データに対応可能なコスト効率の良いストレージ。
- 対象データタイプ: 全データタイプ。
e. BigQuery
- 用途: 大規模データセット(主に表形式)のクエリ処理、音声テキストの検索。
- 強み: 高速な分析クエリ処理。
- 対象データタイプ: 表形式・文字起こしテキスト。
f. Cloud Speech-to-Text API
- 用途: 音声データをテキストに変換。
- 強み: 音声の自動文字起こし、後続処理が容易。
- 対象データタイプ: 音声。
3. データタイプ別ベストプラクティス
A) 表形式データ(例:購買履歴)
- 特徴量管理: Vertex AI Feature Store を使用。
- 前処理: Dataflow でバッチ/ストリーミング処理。
- 自動化: Vertex AI Pipelines でワークフローを自動化。
推奨戦略:
- Vertex AI Feature Store(特徴量の一貫性管理)。
- Dataflow(リアルタイム/バッチ前処理)。
B) 音声データ(例:音声認識)
- 格納: Cloud Storage に音声ファイルを保存。
- 文字起こし: Cloud Speech-to-Text API を利用。
- 前処理: Dataflow で音声またはテキストデータを前処理。
推奨戦略:
- Cloud Storage + Dataflow(格納と前処理)。
- Cloud Speech-to-Text API + BigQuery(文字起こしとクエリ処理)。
C) 画像データ(例:ラベル付き画像)
- 格納: Cloud Storage に画像を保存。
- 前処理・拡張: Dataflow で画像前処理やデータ拡張を行う。
- 自動化: Vertex AI Pipelines で前処理とトレーニングを自動化。
推奨戦略:
- Cloud Storage + Vertex AI Pipelines(格納と自動化)。
- Dataflow(前処理と拡張)。
D) 時系列データ(例:金融予測)
- 前処理・拡張: Dataflow で欠損データ処理やデータ拡張。
- 自動化: Vertex AI Pipelines でワークフローを自動化。
推奨戦略:
- Vertex AI Pipelines(エンドツーエンドの自動化)。
- Dataflow(前処理と拡張)。
4. よくある落とし穴
- 手動前処理(Cloud FunctionsやSQL): エラーが発生しやすく、スケーラビリティが低い。
- Feature Storeの誤用: 表形式特徴量専用であり、生の音声・画像・時系列データには不向き。
5. まとめ表
データタイプ | 格納 | 前処理 | 特徴量管理 | 自動化 |
---|---|---|---|---|
表形式 | Cloud Storage | Dataflow | Vertex AI Feature Store | Vertex AI Pipelines |
音声 | Cloud Storage | Dataflow、Speech-to-Text | なし | Vertex AI Pipelines |
画像 | Cloud Storage | Dataflow(拡張含む) | なし | Vertex AI Pipelines |
時系列 | Cloud Storage | Dataflow(拡張含む) | なしまたはPipelines内で管理 | Vertex AI Pipelines |
6. 試験対策ポイント
- 自動化・スケーラブルなソリューションを優先: Dataflow と Vertex AI Pipelines が中心。
- Vertex AI Feature Storeは表形式特徴量専用。
- 手動処理(Cloud FunctionsやSQL)は避ける: スケーラビリティや信頼性が低下。