✅ はじめに
統計検定2級の学習において、Z検定とT検定の違いは最重要テーマのひとつです。
この記事では、**「検定統計量とは何か」**を本質から整理し、Z検定とT検定の違いを体系的にまとめます。
✅ 1. 検定統計量とは何か?
検定統計量とは、簡単にいうと
「観測されたズレを、ズレが自然に起こる標準的な大きさで割ったもの」
です。
式で書くと、一般形はこうなります。
$$ \text{検定統計量} = \frac{\text{観測された差}}{\text{標準誤差}} $$
- 観測された差:標本平均 $\overline{X}$ と仮説上の母平均 $\mu$ の差
- 標準誤差:その差が偶然生じる「標準的な幅」
✅ 2. Z検定とは?(母標準偏差が既知の場合)
◆ Z検定の検定統計量
母標準偏差 $\sigma$ が既知の場合、Z検定では以下のように検定統計量 $Z$ を定義します。
$$ Z = \frac{\overline{X} – \mu}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}} $$
- 分子:標本平均と母平均の差
- 分母:標本平均の標準偏差(=母標準偏差を $\sqrt{n}$ で割ったもの)
◆ ポイント
- 元データの標準偏差 $\sigma$ が分かっている前提
- 標本平均のばらつき(標準誤差)は $\sigma / \sqrt{n}$
- 使う分布は標準正規分布(Z分布)
✅ 3. T検定とは?(母標準偏差が未知の場合)
◆ T検定の検定統計量
母標準偏差 $\sigma$ が未知の場合、標本標準偏差 $S$ を使って検定します。
このときの検定統計量 $T$ は次のように定義されます。
$$ T = \frac{\overline{X} – \mu}{\frac{S}{\sqrt{n}}} $$
- 分子:標本平均と母平均の差
- 分母:標本標準偏差 $S$ を使った標準誤差
◆ ポイント
- 母標準偏差 $\sigma$ を推定するので不確かさが増える
- ばらつきが大きくなり、標準正規分布よりも裾の広いt分布を使う
- t分布の自由度は $n-1$
✅ 4. 標本標準偏差と標準誤差の違い
ここでよく混同しがちな違いを整理します。
用語 | 定義 | 意味 |
---|---|---|
標本標準偏差 $S$ | $S = \sqrt{\frac{1}{n-1} \sum (X_i – \overline{X})^2}$ | 元データ $X$ のばらつき |
標準誤差(SE) | $\text{SE} = \frac{S}{\sqrt{n}}$ | 標本平均 $\overline{X}$ のばらつき |
つまり、
検定統計量の分母に使うのは、標本平均の標準偏差(標準誤差)
です!
✅ 5. まとめ表
Z検定 | T検定 | |
---|---|---|
母標準偏差 $\sigma$ | 既知 | 未知(推定) |
分母 | $\sigma/\sqrt{n}$ | $S/\sqrt{n}$ |
使用分布 | 標準正規分布(Z分布) | t分布(自由度 $n-1$) |
分散の求め方 | 母集団の値 | 標本から計算(2乗和を使う) |
✅ おわりに
ここまで整理できれば、Z検定とT検定の違いはほぼ完璧に理解できています。
- 2標本T検定
- 分散分析(ANOVA)
- 回帰分析の検定 などでもこの「ズレ ÷ 標準誤差」という発想がベースになります。