マーケティング・コミュニケーションに使う費用の設定は、企業の戦略や業界特性によって異なり、以下のような代表的な4つの方法があります。それぞれの特徴と課題を把握しておくことが重要です。
主要な4つの予算設定法とその特徴
設定法 | 概要 | 特徴・利点 | 問題点・留意点 |
---|---|---|---|
①支出可能額法 | 経営陣が支出可能と考える範囲で予算を決定 | ・資金繰りを重視 ・簡便に設定可能 | ・売上や費用対効果を十分に考慮しない ・長期的なマーケ計画が立てにくい |
②売上高比率法 | 売上高に一定割合を掛けて予算を決定 | ・計算が容易で実務的 ・前年データを基準にしやすい | ・売上が販売促進の結果なのか要因なのかが不明確 ・売上減少時に予算も連動して減る |
③競争者対抗法 | 競合他社の支出額に合わせて予算を決定 | ・競合とのバランスを取りやすい | ・他社の戦略に依存しやすい ・独自戦略が立てにくい |
④目標基準法 | 目標達成に必要なタスクを積算し予算を決定 | ・合理的・説明責任が取りやすい ・費用対効果を評価しやすい | ・目標達成に必要な具体的タスクの見積もりが困難な場合がある |
各手法の詳細解説
① 支出可能額法(Available Funds Method)
- 定義:支払可能な範囲で残資金から予算を割り当てる方法。
- 特徴:
- 売上や利益を先に見積もり、そこから販売費等を差し引いた残額で広告費を設定。
- 長期計画には向かず、場当たり的。
- 適用されやすい場面:資金繰りが厳しい、あるいは計画的投資が難しい中小企業など。
② 売上高比率法(Percentage of Sales Method)
- 定義:売上見込みに一定比率を掛けて広告費を決定する方法。
- 特徴:
- 計算が簡単で、過去データをベースに調整しやすい。
- 営業活動の結果として売上があるのか、広告による売上増を期待するのかという因果関係が曖昧になりがち。
- 課題:
- 売上が減れば広告費も減るという悪循環を招くことも。
- 経営的な成長戦略と連動しない場合がある。
③ 競争者対抗法(Competitive Parity Method)
- 定義:競合他社の支出に合わせて予算を決定する方法。
- 特徴:
- 自社がマーケット内で埋もれないようにするための防衛的な手法。
- 競合の動向をベンチマークしやすい。
- 課題:
- 他社の戦略に依存する危険性。
- 差別化や独自性を欠くことがある。
④ 目標基準法(Objective and Task Method)
- 定義:明確な目標を設定し、その達成に必要なタスクを積み上げて予算を算出。
- 特徴:
- 最も合理的な方法とされ、説明責任を果たしやすい。
- 出稿量、露出回数、試用率、固定客数などとの関係を明示できる。
- 課題:
- 必要なタスクや達成に至るプロセスを明確に見積もるのが難しい。
- 定量的指標が明確に出せない施策には適しづらい。
試験対策ポイント
- 「予算設定方法の分類・特徴・課題」のセットで覚える。
- 特に「売上高比率法は販売促進の結果と原因を混同してしまう懸念がある」という記述は、試験で「誤り」として出題されやすい。
- 「目標基準法」は合理的で最も理想的な方法とされるが、実務では難易度が高いため、注意点も押さえること。