かけだしのIPに対して「いきなり全方位展開」は効果が分散しすぎて薄くなりがちです。とくに0→1、1→2の移行には、それぞれ別の壁があります。そこで、これまで4ステップで整理していた発展論を、さらに実態に即した8段階ステップに細分化しました。
🔹 STEP 0:世界観スパーク段階(発案・構想)
「これ、物語になりそう」と思わせる原型をつくる
- ミニ設定やメモ、プロット、イメージラフを公開
- 反応がよかった断片だけを磨いていく
🎯目的:点火する最小の火種(萌芽ファン)を見つける
✅ 具体アクション例:
- 世界観の断片(手帳の落書き、アイデアメモ)をXやnoteに投稿
- キャラの設定断片・地図・相関図をインスタやPinterestで発信
- ストーリーでなく“妄想語り”の形でSNS投稿してリアクションを見る
🔹 STEP 1:語らせる段階(初期ファン獲得)
設定やキャラが“語りたくなる余白”を持つ
- 世界観はすべて明かさず、“裏”を想起させる断片設計
- 複数の推しどころ(属性・関係性の違い)を用意
🎯目的:UGCやSNSで「勝手に盛り上がる」土壌を作る
✅ 具体アクション例:
- 「公式設定はあえて語らない」スタンスでミステリアスな投稿を定期配信
- キャラ人気投票や“このセリフは誰?”クイズを実施
- キャラ同士の関係性をあいまいにする(考察誘発)
🔹 STEP 2:関与を誘う段階(初期ファンダム醸成)
参加・共創をゆるく歓迎する空気づくり
- ファンアート、SS、考察などを“運営側”が拾う
- 公式ではなく「反応」で返す距離感
🎯目的:推し文化、二次創作文化の起点を育てる
✅ 具体アクション例:
- ファンアート投稿用のタグを用意し、週1で作品を紹介(RT)
- 二次創作歓迎スタンスを明記した公式ガイドラインを公開
- 読者・視聴者アンケートで「未登場キャラ」の性格や設定を募集
🔹 STEP 3:遊ばせる段階(能動的ファンダム形成)
キャラや世界を“遊べる対象”にする
- 育成・分類・収集など、軽めの参加コンテンツを設計
- トレカ/ステッカー/スタンプなど導入もこの段階
🎯目的:ファンが“動く”→“残る”存在になる
✅ 具体アクション例:
- 登場キャラの相性診断や“属性タグカード”をWeb上で配布
- LINEスタンプやARカメラフィルターを無料公開
- 地元と連携してキャラ探しスタンプラリー(アプリや紙)を実施
🔹 STEP 4:収益接点をつくる段階(初期マネタイズ)
売るではなく“支持の証”として商品を設計
- ガチャ/会場物販/アクスタなど“持ちたい”商品に限定
- ファンが買ってSNSに上げたくなる構造を意識
🎯目的:応援購買文化をつくる(売上より象徴)
✅ 具体アクション例:
- 初期は数量限定アクスタ・シールなど“小ロット+高満足度”に絞る
- “ファンしか知らない”セリフ入りのTシャツや缶バッジを制作
- クラファンで「出資者キャラ入りバージョン」などを設計
🔹 STEP 5:拡張への耐性づくり(マルチメディア前夜)
他メディアでも再現可能な“構造”を明文化する
- キャラの性格、関係図、世界観のレイヤーを整理
- メディア別に適した切り出し単位を想定しておく
🎯目的:アニメ化・舞台化・ゲーム化に耐える「設計図」を持つ
✅ 具体アクション例:
- キャラの性格・目的・過去を一枚資料にまとめる
- 「このキャラが登場しない物語」をスピンオフ前提で試作
- 世界観の地図・宗教・年表などを裏設定資料集として制作
🔹 STEP 6:他メディア拡張(一次展開の多面化)
別視点・別媒体での表現を開始
- スピンオフマンガ、小説、舞台朗読、LINEスタンプなど
- アニメ化はこの先(拙速なTV展開は避ける)
🎯目的:ファン層を分化させることで、IPの厚みを生む
✅ 具体アクション例:
- LINEマンガやYouTubeショートで「派生キャラ」の物語を発信
- 舞台化・朗読劇化に向けたプロト台本を制作し、試演会を実施
- Webラジオやボイスドラマをパーソナリティ化して展開
🔹 STEP 7:産業化・継承設計フェーズ(長期基盤)
他者参加可能なライセンスとガイドライン整備
- ガンダム、仮面ライダー、東方、初音ミク等のように
- キャラクターの“軸”を保ったまま、作家が交代できる構造
🎯目的:IPを“文化資本”として残す
✅ 具体アクション例:
- 二次創作と商用利用のライセンスラインを策定しWeb公開
- 地元商工会と連携し、企業向けロイヤリティメニューを作成
- 若手クリエイター向けに「このIPで企画を提案していい月間」を設ける
🧭 まとめ:8ステップでIPは「場」から「文化」へ
A0 [STEP 0] 世界観スパーク –> A1 [STEP 1] 語らせる
A1 –> A2 [STEP 2] 関与を誘う –> A3 [STEP 3] 遊ばせる
A3 –> A4 [STEP 4] 収益接点をつくる
A4 –> A5 [STEP 5] 拡張への耐性づくり –> A6 [STEP 6] 他メディア拡張
A6 –> A7 [STEP 7] 産業化・継承設計
このステップ論は、地方創生IP・個人IP・企業内IPなど、あらゆる創作・ブランド育成に応用可能です。
特に0→1の段階では「火がつくか」だけを見て、無理に売ろうとしない判断が肝要です。
ご希望があれば、この8段階ステップに沿った事例分析(Fate、東方、ブルアカ、ウマ娘など)も可能です。