ホーム » Google認定MLエンジニア » ローコード機械学習ソリューションの構築 » 【Google認定MLエンジニア】業界特化API(Industry-specific API)実装ガイド

【Google認定MLエンジニア】業界特化API(Industry-specific API)実装ガイド

業界特化API(Industry-specific API implementation)は、Document AI、Retail API、Healthcare API、Media Translation APIなど、特定の業務用途に最適化されたGoogle CloudのAPI群を使って、スケーラブルで責任ある機械学習ソリューションを構築・展開するスキルを問う領域です。

以下では、各APIの目的、設計パターン、推奨構成、よくある誤りを体系的にまとめます。


📄 1. Document AI API(文書解析)

✅ 推奨アーキテクチャ

  • Cloud Storage にスキャン文書を保存
  • Cloud Functions でアップロードをトリガーし、自動処理
  • Dataflow で事前処理(画像補正やOCR補助)
  • BigQuery に結果を格納し、分析基盤と連携

🚫 非推奨アクション

  • Vertex AI Model Monitoring(Document AI はマネージドサービスのため不要)
  • Cloud Run を使ったリアルタイム処理(Cloud Functions で十分)

🏷 試験で問われやすいポイント

  • Cloud Functions でスケーラブルな自動処理を実装
  • BigQuery に格納して分析可能性を担保

☁️ Cloud Functions と Cloud Run の違いガイド

Google Cloud の Cloud FunctionsCloud Run はどちらも「サーバーレス」な実行環境ですが、用途や設計思想が異なります。以下にそれぞれの特徴と違いを整理します。


🌩 Cloud Functions と Cloud Run の違いまとめ

項目 Cloud Functions Cloud Run
🧭 主な用途 単機能のトリガー型処理(イベント駆動) コンテナを使ったHTTPアプリ/API運用(柔軟な構成)
⚡ 起動方式 イベント駆動型(例:Cloud Storage にファイルがアップされた時) HTTPリクエスト駆動型 または常駐処理
🏗 構築単位 関数(Function)単位のコード 任意のコンテナイメージ(アプリごと)
🛠 言語/実行環境 Node.js, Python, Go など指定されたランタイム 任意のランタイム(Dockerで動けばOK)
📦 実行内容の自由度 比較的限定的(状態を持たない1関数) 高い(マルチエンドポイントAPIやフレームワークもOK)
🌐 外部からのアクセス HTTPまたはPub/Sub等のイベント経由 HTTP(WebアプリやAPI向け)
🚀 起動の速さ(Cold Start) やや速い(関数なので軽量) やや遅め(コンテナ全体起動)※改善中
🔒 セキュリティ/認証 IAM & イベント権限制御 IAM & リクエストレベルの認証(細かい設定可能)
💰 課金単位 関数の実行時間+呼び出し回数 コンテナ稼働時間(秒単位)とメモリ消費量

☑ どちらを使うべきか?

✅ Cloud Functions が向いているケース
  • Cloud Storage / PubSub / Firestore など Google Cloud内のイベントに反応したい
  • 「何かが起きたら即処理したい」タイプの処理
  • 簡単なAPIやWebhook(1関数で完結)
  • コードだけでOK、Dockerを使いたくない場合

例:

  • ファイルアップロード後に自動OCR処理
  • Pub/Subメッセージ受信時にデータ変換

✅ Cloud Run が向いているケース
  • 複雑なAPIロジックWebアプリをサーバーレスで運用したい
  • 自前のライブラリや依存関係を含んだ Docker環境 で動かしたい
  • 状態を保持する処理(例:セッション、キャッシュ)や 非同期ジョブ管理
  • 外部からHTTPで 柔軟なルーティング制御 が必要な場合

例:

  • FlaskやExpressで構築したWebアプリ/API
  • 長時間かかる機械学習バッチ処理
  • 非同期なトランスコーディングや画像生成

🧠 試験対策的な補足

試験でよく問われる判断基準
✅ Cloud Functions は「リアルタイム処理」や「トリガー処理」に向いている
✅ Cloud Run は「コンテナを用いた柔軟なサービス設計」に向いている
⚠ Cloud Functions で済むケースに Cloud Run を使うと「過剰設計」になりがち

🛒 2. Retail API(商品推薦)

✅ 推奨アーキテクチャ

  • BigQuery に蓄積された商品データを Cloud Functions で Retail API に送信
  • 推薦結果は BigQuery に保存して BI やレポートに活用
  • Cloud Operations Suite(旧 Stackdriver) で API の使用量・エラー率をモニタリング

🚫 非推奨アクション

  • Vertex AI でバイアス検出(Retail API 自体がブラックボックスなので過剰)

🏷 試験で問われやすいポイント

  • Vertex AI を無理に使わない
  • リアルタイム性を Cloud Functions で担保

🏥 3. Healthcare API(患者記録分析)

✅ 推奨アーキテクチャ

  • Cloud SQL に格納されたデータに対し、Cloud Functions で自動トリガー処理
  • IAM+暗号化 によるセキュアなアクセス制御
  • 結果も Cloud SQL に保存し、厳格なセキュリティとプライバシー保持

🚫 非推奨アクション

  • Dataflow での前処理(Healthcare API は多様な形式を直接受け付け可能)
  • CI/CD構築(分析用途には不要)

🏷 試験で問われやすいポイント

  • セキュリティ・暗号化・IAMがキーワード
  • Healthcare API は前処理不要

🎬 4. Media Translation API(字幕翻訳)

✅ 推奨アーキテクチャ

  • Cloud Storage にアップロードされた字幕ファイルを Cloud Functions でトリガー
  • BigQuery に翻訳結果を保存して多言語対応の効果を分析
  • Cloud Operations Suite で翻訳精度やAPI使用量をモニタリング

🚫 非推奨アクション

  • Vertex AI での翻訳モデル構築(Media Translation API 単体で十分)
  • Cloud Run の活用(Cloud Functions で事足りる)

🏷 試験で問われやすいポイント

  • Vertex AIを使わず、API単体での完結性を重視

🛑 全体のCAUTIONまとめ

ケース よくある誤答 正しい理解
Document AI Vertex AI Monitoring 管理されたAPIには不要
Retail API Vertex AIでバイアス検出 過剰な構成
Healthcare API Dataflowで前処理 不要。APIが処理可能
Media Translation Vertex AIで翻訳精度強化 APIで十分

✨まとめ:業界特化API実装の3大ポイント

  1. Cloud Functions はトリガー型のリアルタイム処理に最適
  2. BigQuery は分析・統合のハブとして定番
  3. Vertex AIやDataflowの利用はケースバイケースで必要最小限に