投稿者: 創作未来研究所

  • 【Google認定MLエンジニア】BigQuery MLによる実践的なモデル構築・評価・運用ガイド

    【Google認定MLエンジニア】BigQuery MLによる実践的なモデル構築・評価・運用ガイド

    ✅ はじめに

    BigQuery ML(BQML) は、Google Cloud 上でSQLベースに機械学習モデルを構築・運用できる強力なツールです。 このノウハウ記事では、Googleの認定試験(Professional ML Engineer)や現場で問われるスキルをベースに、

    • データ設計
    • 特徴量エンジニアリング
    • モデル選定
    • 公平性
    • 自動運用(MLOps)

    といった観点から、構築すべきモデルの判断力・手順をわかりやすくまとめました。

    📂 適切なモデル構築ステップ(全体像)

    1. データの収集・更新設計
    2. 特徴量の抽出と前処理
    3. モデルアルゴリズムの選定
    4. 評価とリトレーニング戦略
    5. 公平性と責任あるAIの実装
    6. デプロイとスケーラブル運用

    各フェーズで BQMLがどこまでカバーできるか/どこで外部ツールが必要か を理解するのが重要です。

    ① データの更新性・鮮度を保つ

    🧠 ポイント

    • モデル精度は 「最新データ×継続的学習」 が命
    • 特に「離脱予測」「購買予測」「レコメンド」などは時間とともにデータが陳腐化

    ✅ 推奨する構成

    要素 ツール
    データ自動更新 BigQuery Data Transfer Service (BQ DTS)
    月次リトレーニング Cloud Scheduler + BQML で retrain

    ❌ よくある誤り

    • Cloud Functions でデータ取り込みを手作業スクリプトでやる(冗長・非効率)

    ② 特徴量エンジニアリングは「BQ内完結」が基本

    BQMLには、次のような特徴量処理機能が組み込みで提供されています。

    機能 用途
    FEATURE_SELECTION 重要な特徴量を自動選定(高次元対策)
    FEATURE_CROSS カテゴリ変数同士の掛け合わせ
    STANDARD_SCALER 数値のスケーリング(勾配学習安定化)

    🔧 実務Tips

    • 顧客の「性別×年代」などの交差は FEATURE_CROSS
    • 価格や視聴回数のスケーリングは STANDARD_SCALER

    ❌ NG判断

    • 「Cloud Functions + Python」で前処理を書く必要は基本なし
    • 「Vertex AI Workbench」で前処理だけ行うのは冗長

    ③ モデルの選び方(タスク別)

    🎯 BQMLで選べる主要モデルと適用ケース

    モデルタイプ 主な用途
    LINEAR_REG 数値予測(売上・温度・故障時期)
    LOGISTIC_REG 二値分類(購入/非購入、離脱/継続)
    ARIMA_PLUS 時系列予測(週ごとのPV、売上)
    MATRIX_FACTORIZATION レコメンド(ユーザー×アイテム)←🆕 推薦問題対応

    🚨 注意点

    • 「Vertex AIを使えばいい」はNG。BQMLでできるならそれがベストプラクティス
    • モデル選定の根拠が重要。回帰 vs 分類 vs 推薦の判断力を持つこと。

    ④ 評価・自動再学習・モニタリング

    ✅ モデル精度の評価指標(BQML)

    ML.EVALUATE関数で AUC、RMSE、Log Loss などを確認

    🔁 再学習スキーム

    • Cloud Schedulerで月次バッチ retrain を自動化
    • 特徴量エンジニアリング+再学習=MLOps構築の第一歩

    🧠 高度化オプション

    • Vertex AI Model Monitoring で、モデルバイアスや精度の劣化を継続監視
      • 特にローン審査・医療・HR分野で重要

    ⑤ フェアネスと責任あるAIの実装

    ✅ なぜ必要?

    • 特定の属性(年齢・性別・国籍)に偏った予測を防ぐため

    推奨実装

    項目 方法
    バイアス検出 Vertex AI Model Monitoringで属性ごとの予測傾向を監視
    定期レビュー チームで公平性のダッシュボード確認(特にモデル更新時)

    ❌ 誤解されがち

    • 「暗号化」はセキュリティ対策であって、フェアネスとは別問題

    ⑥ モデルのデプロイとスケーラブル運用

    シナリオ 推奨手法
    Webアプリからリアルタイム予測 Cloud Run で BQMLモデルをサービング ←🆕 推薦システム問題で出題
    モデルの保存 BigQuery ML内で自動的にバージョニング管理される(Cloud Storageへの保存は不要)

    ✅ まとめ:試験や実務で役立つ判断軸

    判断軸 YESなら選択
    データがBigQueryにある → BQMLで処理
    前処理がSQLでできる → BQML内で完結させる
    モデル更新は月次でOK → Cloud Scheduler+BQML retraining
    公平性が求められる → Vertex AI Model Monitoring で監視
    推薦が必要 → MATRIX_FACTORIZATION
    リアルタイム推論が必要 → Cloud Run を使う
  • 【Google認定MLエンジニア】Google Cloud 機械学習エコシステムの主要プロダクト一覧

    【Google認定MLエンジニア】Google Cloud 機械学習エコシステムの主要プロダクト一覧

    • データ収集/整形
      • Cloud Storage / PubSub / Dataflow / Dataprep

    • 前処理/特徴量管理
      • BigQuery / Dataform / Feature Store

    • モデリング
      • BigQuery ML / Vertex AI Workbench / AutoML / Custom Training

    • パイプライン/MLOps
      • Pipelines / Model Registry / Experiments

    • デプロイ・推論
      • Vertex AI Prediction / Edge Deployment / Matching Engine

    こんなときはどれ?

    状況 おすすめツール
    SQLだけで予測モデルを作りたい BigQuery ML
    ノートブックで深層学習したい Vertex AI Workbench
    ノーコードで画像分類モデルを作りたい AutoML Vision
    本番運用のMLOpsを整備したい Vertex AI Pipelines + Model Registry
    特徴量を複数チームで共有したい Vertex AI Feature Store
  • ABテストで有意差を確認する方法 ― 標準誤差・Z値・P値の関係とは? ―

    ABテストで有意差を確認する方法 ― 標準誤差・Z値・P値の関係とは? ―

    ABテストを行う際、「AとBでクリック率に差があったけど、それって本当に意味があるの?」という疑問が出てきますよね。 その疑問に答えるのが、「標準誤差」「Z値」「P値」という統計的な指標です。


    標準誤差とは?

    ある確率 $P$ の現象(例:クリックされる確率)について、サンプル数 $n$ に対するばらつきを表すのが標準誤差 $\sigma$ です。

    $$\sigma=\sqrt{\dfrac{P(1-P)}{n}}$$


    ABテストでの応用

    • パターンAのクリック率:$P_A$
    • パターンBのクリック率:$P_B$
    • サンプル数:それぞれ $n_A$、$n_B$

    全体の平均クリック率(プール確率)は次のように求めます:

    $$P = \dfrac{n_A P_A + n_B P_B}{n_A + n_B}$$

    このときの標準誤差は:

    $$\sigma=\sqrt{P(1-P) \left( \dfrac{1}{n_A} + \dfrac{1}{n_B} \right) }$$


    Z値とは?

    パターンAとBのクリック率の差が、標準誤差の何倍か?を表すのがZ値です:

    $Z = \dfrac{ P_A – P_B }{\sigma}$


    P値とは?信頼区間との関係

    Z値が導かれたら、「それが偶然どれくらい起こる確率か?」を表すのが P値。 そして「その差が統計的に有意かどうか」の判断に使います。

    P値 信頼区間 Z値(両側検定)
    0.20 80% ±1.28
    0.15 85% ±1.44
    0.10 90% ±1.645
    0.05 95% ±1.96
    0.01 99% ±2.576

    ExcelやGoogleスプレッドシートでのP値の求め方

    難しい数式を使わなくても、Z値がわかれば以下の関数でP値を計算できます:

    =2 * (1 - NORM.S.DIST(ABS("Z値"), TRUE))
    

    身近な感覚としての「5%」「20%」

    実は、P値の5%という水準って、案外わたしたちの生活感覚とリンクしていたりします。

    たとえば小中学生のころ、「学年でみんなが好きになるような人気者」って、だいたい20人に1人、全体の5%くらいだった気がしませんか? 日本人の左利きの割合も5%くらい。 逆に、クラスで「よく一緒に遊ぶ同性の友達」は5人に1人=20%くらい。 この「ちょっと特別」な割合が、統計にも出てくるんです。

    仕事でも似た感覚があって、

    • 5案出せば、そこそこいいアイデアが1つくらいは出る
    • 20案出せば、これはイケる!って案が1つくらい出る

    そんな体感、ありませんか?

    統計のP値や信頼区間はあくまで理論的なものですが、 自分の体感値とリンクさせることで、数字がぐっと身近に感じられるようになります。

    まとめ

    ABテストで差が「偶然なのか」「有意な違いなのか」を判断するために、

    • 標準誤差:ばらつきの度合い
    • Z値:差が標準誤差の何倍か
    • P値:その差が偶然起きる確率

    を順にチェックするのが基本です。