✅ はじめに
BigQuery ML(BQML) は、Google Cloud 上でSQLベースに機械学習モデルを構築・運用できる強力なツールです。 このノウハウ記事では、Googleの認定試験(Professional ML Engineer)や現場で問われるスキルをベースに、
- データ設計
- 特徴量エンジニアリング
- モデル選定
- 公平性
- 自動運用(MLOps)
といった観点から、構築すべきモデルの判断力・手順をわかりやすくまとめました。
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📂 適切なモデル構築ステップ(全体像)
- データの収集・更新設計
- 特徴量の抽出と前処理
- モデルアルゴリズムの選定
- 評価とリトレーニング戦略
- 公平性と責任あるAIの実装
- デプロイとスケーラブル運用
各フェーズで BQMLがどこまでカバーできるか/どこで外部ツールが必要か を理解するのが重要です。
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① データの更新性・鮮度を保つ
🧠 ポイント
- モデル精度は 「最新データ×継続的学習」 が命
- 特に「離脱予測」「購買予測」「レコメンド」などは時間とともにデータが陳腐化
✅ 推奨する構成
要素 | ツール |
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データ自動更新 | BigQuery Data Transfer Service (BQ DTS) |
月次リトレーニング | Cloud Scheduler + BQML で retrain |
❌ よくある誤り
- Cloud Functions でデータ取り込みを手作業スクリプトでやる(冗長・非効率)
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② 特徴量エンジニアリングは「BQ内完結」が基本
BQMLには、次のような特徴量処理機能が組み込みで提供されています。
機能 | 用途 |
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FEATURE_SELECTION | 重要な特徴量を自動選定(高次元対策) |
FEATURE_CROSS | カテゴリ変数同士の掛け合わせ |
STANDARD_SCALER | 数値のスケーリング(勾配学習安定化) |
🔧 実務Tips
- 顧客の「性別×年代」などの交差は FEATURE_CROSS
- 価格や視聴回数のスケーリングは STANDARD_SCALER
❌ NG判断
- 「Cloud Functions + Python」で前処理を書く必要は基本なし
- 「Vertex AI Workbench」で前処理だけ行うのは冗長
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③ モデルの選び方(タスク別)
🎯 BQMLで選べる主要モデルと適用ケース
モデルタイプ | 主な用途 |
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LINEAR_REG | 数値予測(売上・温度・故障時期) |
LOGISTIC_REG | 二値分類(購入/非購入、離脱/継続) |
ARIMA_PLUS | 時系列予測(週ごとのPV、売上) |
MATRIX_FACTORIZATION | レコメンド(ユーザー×アイテム)←🆕 推薦問題対応 |
🚨 注意点
- 「Vertex AIを使えばいい」はNG。BQMLでできるならそれがベストプラクティス
- モデル選定の根拠が重要。回帰 vs 分類 vs 推薦の判断力を持つこと。
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④ 評価・自動再学習・モニタリング
✅ モデル精度の評価指標(BQML)
ML.EVALUATE関数で AUC、RMSE、Log Loss などを確認
🔁 再学習スキーム
- Cloud Schedulerで月次バッチ retrain を自動化
- 特徴量エンジニアリング+再学習=MLOps構築の第一歩
🧠 高度化オプション
- Vertex AI Model Monitoring で、モデルバイアスや精度の劣化を継続監視
- 特にローン審査・医療・HR分野で重要
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⑤ フェアネスと責任あるAIの実装
✅ なぜ必要?
- 特定の属性(年齢・性別・国籍)に偏った予測を防ぐため
推奨実装
項目 | 方法 |
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バイアス検出 | Vertex AI Model Monitoringで属性ごとの予測傾向を監視 |
定期レビュー | チームで公平性のダッシュボード確認(特にモデル更新時) |
❌ 誤解されがち
- 「暗号化」はセキュリティ対策であって、フェアネスとは別問題
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⑥ モデルのデプロイとスケーラブル運用
シナリオ | 推奨手法 |
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Webアプリからリアルタイム予測 | Cloud Run で BQMLモデルをサービング ←🆕 推薦システム問題で出題 |
モデルの保存 | BigQuery ML内で自動的にバージョニング管理される(Cloud Storageへの保存は不要) |
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✅ まとめ:試験や実務で役立つ判断軸
判断軸 | YESなら選択 |
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データがBigQueryにある | → BQMLで処理 |
前処理がSQLでできる | → BQML内で完結させる |
モデル更新は月次でOK | → Cloud Scheduler+BQML retraining |
公平性が求められる | → Vertex AI Model Monitoring で監視 |
推薦が必要 | → MATRIX_FACTORIZATION |
リアルタイム推論が必要 | → Cloud Run を使う |