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生成AIを活用した「ショート動画 → 長尺アニメ」制作フロー(2025年6月版)

生成AIによるアニメーション動画は、SNSや動画プラットフォームで急速に普及しています。特に「1カットの美しさ」や「一瞬で目を引くビジュアル」に関しては、圧倒的なクオリティを実現する事例も増えています。

しかし一方で、ストーリーとして心を動かされる作品や、シリーズ化・IP展開の可能性を感じさせるプロジェクトには、なかなか出会うことがありません。
多くの生成AI作品は、「映像単体」で終わってしまい、「物語として続きが見たくなる仕掛け」や「キャラクターの成長や関係性」といった要素が欠けがちです。

本記事では、その課題感を背景に、生成AI時代において“連続アニメ”を本気で構築・運営するためのプロフェッショナルな制作フローを構想しました。
単に「映える動画を作る」だけでなく、「世界観・キャラ・構造・反応テスト・成長性」を踏まえて、シリーズ展開を見据えた実践的なプロセスをご紹介します。


✅ 各ドキュメントの役割

ドキュメント名目的・内容
シリーズバイブル(Series Bible)世界観・キャラクター・ルール・トーン・禁則事項などを定義する「設定集」
シーズンアーク(Season Arc)シーズン全体の物語の起承転結を俯瞰で設計。複数話にまたがる謎や伏線の整理
エピソードアウトライン(Episode Outline)各話のあらすじと展開。1話ごとの目的、軸、キャラの成長、伏線など

🔷 生成AI活用によるプロフェッショナルな制作フロー

① 世界観・ジャンル・シリーズバイブル
 ┗ キャラクター設計(キャラバイオ+デザイン)
  ┣ キャラバイオ
  ┣ キャラデザイン
  ┗ キャラビジュアルのSNSテスト(X・pixiv・インスタ・Tiktokで反応分析)

② シーズンアーク設計

③ エピソードアウトライン設計

④ 名シーン抽出・イメージボード作成
 ┗ 映えるカット案のSNS投稿による反応収集(X・pixiv・インスタ・Tiktokでテスト)

⑤ ショート動画化(名シーン優先)

⑥ SNS投稿・反応確認
 ┗ 演出・テンポ・声・雰囲気に対するリアクションを観察し方向性微調整

⑦ 長尺アニメ制作

⑧ 継続展開・IP発展

※このフローは「映像として映えるか?」だけでなく、「物語として惹きつけるか?」「次が見たくなる構成になっているか?」という視点を強く意識しています。


🔹 ① 世界観・ジャンル・シリーズバイブル

項目内容
世界設定世界のルール、地理、科学、魔法体系など
キャラクター設定名前、性格、目的、人間関係、口調、過去
トーン・ジャンルシリアス or コメディ、少年漫画風 or 大河劇など
禁則事項「主人公は殺さない」「絶対に恋愛関係にならない」など制作上の制約も記載

┗ キャラクター設計(キャラバイオ+デザイン)

┣ キャラバイオ

項目内容
名前・年齢・性別読みやすく、覚えやすく
外見の特徴髪型・服装・身長・カラー・アイテムなど
性格長所と短所、口調、価値観、恐怖、欲望
背景出身、家族構成、過去の事件やトラウマ
目的今作で何を達成したいのか(=行動原理)
関係性他キャラとの関係(敵対/信頼/片思いなど)
変化シーズン内でどう成長・変化するか

┣ キャラデザイン

ツール例:

  • Stable Diffusion(ControlNet, LoRA活用)
  • Leonardo AI / Midjourney v6(参考画像付き)
  • Niji・Mage.Space / Anything V5(アニメ調特化)

工程:

  1. バイオに基づいてプロンプト作成
  2. 表情差分や服装バリエーション生成
  3. 立ち絵(前・横・後)やSD化の生成

┗ キャラビジュアルのSNSテスト

  • 生成した立ち絵やバストアップ、SDイラストをX(旧Twitter)やpixiv、インスタ、Tiktokで投稿
  • 保存数・コメント・いいね数を定量的に確認
  • 反応の薄いキャラは再設計、人気が出た場合はその特徴を強化

🔹 ② シーズンアーク設計(全体構造)

項目内容
起承転結起:導入/承:展開/転:どんでん返し/結:クライマックス
エピソードごとの目的「第3話で仲間割れ」「第5話で新敵登場」など配置
伏線と回収序盤に散りばめた要素がどこで回収されるか

🔹 ③ エピソードアウトライン設計

項目内容
各話の要約例:「第1話:出会いと旅立ち」「第2話:初めての試練」
キャラ成長どのキャラがどう変わるか(心理・立場)
フック・引き視聴者を次話に引き込む要素の明示

🔹 ④ 名シーン抽出・イメージボード作成

多くの生成AI動画が1カットのインパクトで終わってしまうなか、本フローでは「連続性」や「感情の起伏」を設計段階から意識して名シーンを抽出します。

  • アウトラインから映える/泣ける/驚きのシーンを抽出
  • 絵コンテやイメージボードをAI生成
  • 動きのない絵の段階でも一度SNSへ投稿

┗ 映えるカット案のSNS投稿による反応収集

  • pixivやX、インスタ、Tiktokで公開 → どのカットが保存・拡散されたかを確認
  • 結果に応じてシーン構成を練り直す

🔹 ⑤ ショート動画化(名シーン優先)

  • 上記で好評だったカットを中心に30~60秒のAI動画を生成
  • 使用ツール:Pika Labs / Runway Gen-3 / Sora など
  • 音声:ElevenLabsやVOICEVOX、BGMはSuno.aiやSoundrawなどを活用

🔹 ⑥ SNS投稿・反応確認

単なる再生数ではなく、「続きを見たい」「キャラに愛着が湧いた」という反応を得られるかが、長尺制作に進むかどうかの判断材料になります。

  • コメント・保存数・視聴完了率を確認
  • 人気キャラ・好評だった演出を本編にフィードバック

🔹 ⑦ 長尺アニメ制作

  • シーズン構成・エピソード構造に従い、AI動画ツールで本編を生成
  • キャラ設定・シーン演出はショートから流用
  • モーションやリップシンクなどを丁寧に調整

🔹 ⑧ 継続展開・IP発展

  • 人気が出たキャラ・設定を活用して外伝、ノベル、コミカライズなどに展開
  • バイブルがあるため他チームによる展開も可能
  • グッズやクラウドファンディング、ファンダム形成にも対応しやすい

🔸 まとめ:2段階構成のフロー

このように、本記事のアプローチは「生成AIによる映像制作」をゴールとせず、物語性・キャラクター性・構造性を持ったIP構築の起点として捉え直すことを目指しています。

[構想フェーズ]
→ Series Bible(世界観・キャラ)
 ┗ キャラバイオ・キャラデザイン・SNSテスト
→ Season Arc(物語全体)
→ Episode Outline(各話展開)
→ 名シーン抽出・イメボ作成・反応チェック

[制作フェーズ]
→ AIショート動画化 → SNS投稿
→ SNS反応良好 → 長尺制作開始
→ シリーズ化・スピンオフ展開へ

✅ この進め方の強み

項目効果
ストーリー整合性バイブルとアークにより破綻しにくい
SNSテストフル制作前に需要検証でき、無駄が少ない
拡張性キャラが人気になればスピンオフやグッズ化へも対応可能
柔軟性シーンごとに小刻みに反応を見ながら制作できるため、個人でも方向性調整しやすい